同学科の方が企画した、写真を小説にする企画に参加した際の作品です。 https://pando.life/tech-c-fukuoka/article/105559 ねえ、君は覚えているかい。 僕らが出会ったあの日を。 あの頃の僕は、暗...
去年のアニメ企画でアニメ化された脚本を小説に起こしました。 世界で一番ロマンチックなものがあるとすれば、それはきっと、道路脇に停車した二台の車の、 何度読んだって、その続きが書かれる事はもうな...
完璧なものなんてどこにも無いと、主観でしかものを語れない人間は言う。それが間違いであるかどうかはどうでもいい。僕が言いたいのは、「完璧」でなくても、「完成」はある、というところだ。 僕がそんな風...
「この手が嫌いだった」 僕は彼女の手が好きだった。傍から見れば、目を逸らしたくなるほどに傷だらけの手だった。 彼女は生前、ピアノを弾いていた。音楽室の清掃を担当している僕がそこへ向かうと、彼女は決...
「全人類を平等に愛する。それが私の宿題です」 誘拐から一か月後、彼女は初めて口を開いた。 けれどそれは、十歳の女の子が発するにはあまりに残酷で、大人びた子供が小説の一文を抜き出したみたいに浮いた言...
「五味」という印鑑を強く押す。朱印の赤が滲んで、「味」という文字の真ん中辺りが少し潰れる。 毎回上手く印鑑を押せないのが、私の細々とした悩みの一つだった。それに付け加えるなら、印鑑を押す度、潰れた...
死ぬ為に産まれるものがある。 花火がその類かもしれない。光を散らして、一瞬の輝きを放って、それで死ぬ。もう用済みになれば誰も見向きしない。水を張ったバケツにその抜け殻だけが浸っていて、夏の残骸み...
「可哀想」と彼女は言った。「私って気分屋だからさ、別にやる事為す事に大きな意味があるわけじゃないの」「よく知ってるよ」 陽の沈んだ真っ暗な街中、街灯だけを頼りにして歩いた。彼女のぷらぷらとした手持...