COO/オペレーション人材必読の本格的「オペレーション管理の教科書」をつくる

 いま、『はじめてのオペレーション管理』(有斐閣)という教科書を書いている。これは、自分にとって初めての教科書執筆であり、かつ、この教科書を改訂しながら一生使っていこうと思っているので、おそらくは最後の教科書執筆になるのではないかと思っている。
 有斐閣のストゥディアシリーズから出版されるものだ。
 なお、この教科書の各章の内容はプロのアナウンサーが読み上げる10分以内の講義動画にまとめて、YouTubeに無償で公開する予定だ。そのため、忙しい社会人の学び直しや、この教科書を読んでみたいけれど近くの大学では講義が開講されていなくて悩んでいる学生にも、手に取りやすい教科書になる。また、動画の著作権は放棄し、大学・高専・専門学校の先生向けには講義スライドも無償で配る予定である。そのため、オンライン講義やオンライン/対面併用講義への対応に苦慮されている教員の方々にも使って頂きやすい作りになっているはずだ。
 正直なところ、動画が付いて、教科書と行ったり来たりしながらの体験型学習=アクティブ・ラーニングができて、かつ2000円以内(予定)というのはかなり破格だと思う。ではなぜそんな破格の教科書をつくろうと思ったのか。これについて、教科書執筆が本格始動した今日のタイミングで、Pandoに記録しておくことにした。
 まず、根本にあるのは危機感だ。
 それは「日本にはオペレーション(運営)人材が不足しているのではないか?」あるいは「オペレーション人材に光が当たらなくなっているのではないか?」という危機感だった。そうした思いを抱いたのは次のようなことからだった。
 最近、私の周りには起業を志す人が多く、私もそういった人たちから年に何度も相談を受けており、それ自体は非常に好意的に思っていた。それと同時に、なぜか、技術も志もある人は(どちらかといえば)あまり上手くいかない傾向があり、一方でブランディングが上手い人はとんとん拍子で上手くいく傾向にあった。
 それ自体はブランディングの技術ということで認めざるを得ないのだが、同時に私は、世の中一般的に「目立ってなんぼ」の時代になってきていないか、と心配と怒りと悲しみが入り混じる複雑な感情を覚えるようになったのだ。
 そこで、「目立ってなんぼ」の世界に対するカウンターパンチとして、日本においてビジネスをきちんと、地道に、成り立たせることができる」プロフェッショナル・オペレーション人材を増やしたいと思うようになった。そして、オペレーション人材がプロ経営人材として厚遇されれば、今の風潮も少しは変わっていくかもしれないという希望を持ったのだ。
 なお、ここでいう「オペレーション」とは工場での生産活動だけを指すのではなく、ビジネスのオペレーション=運営そのものを指す。つまり、ベンチャーのCOOから飲食店オーナー、サービス業の自営業者、病院経営者、工場長に至るまで、「ビジネスを成り立たせる=オペレーションを担う」ことを仕事とするすべての人に対して良質な入門書を提供するのが、この企画の目的である(下記は執筆ディスカッションメモ。章タイトルはディスカッション用のものでこれからカッコイイものに変わる)。

 
 なお、この教科書は詳細なテーマごとに別々の理論を寄せ集めるのではなく、ビジネスのオペレーションに関わる全てのテーマを「手配」というひとつの概念で横断していき、オペレーションとは何かについて本質をつかむという世界初の教科書にするつもりである。
 なお、ここでいう「手配」とは、「何かに取り組むときに必要なものがちゃんとそろっている状態をつくる」ということを指す。具体的には、ビジネスに必要なMan、Machine、Material、Method、Money(我々はこれを5Mと呼んでいる)を調達し、組み合わせ、システムとして成り立たせ、さらに改善することがオペレーションの本質だと考えている。
 これによって、経営学入門とビジネスモデル論とプロジェクト・マネジメント論と生産管理論とサービス・マネジメント論を統合した、すべてのビジネスパーソンに必須の、ビジネスオペレーションの教科書を作りたい。
 なお、各章は、ビジネスモデルの構築方法からはじまって、5Mの解説、5Mマネジメント手法の紹介、経営戦略とオペレーションの関係、手配の複雑化への対応方法、新技術の活用や災害対策、SDGs時代のオペレーションのあり方など、これまでにない幅広い範囲を「手配」概念を用いて説明していくものになっている。執筆陣には、東北学院大学准教授・秋池篤先生と明治学院大学准教授・加藤木綿美先生が加わってくださっている。


関連記事