泥にまみれよ

　最近投稿する記事がどれもこれも金がらみなので、カネカネうるせーなこいつと思われていないか心配です。ケチとかしみったれといわれるのは頷けるので構いませんが、強欲と思われるのはちょっと悲しい。なんていうのかなー、カネカネ求めなくていいように、出る部分を削りたい。しっかり運用したい。この違いわかってもらえるかしら。

　しかしまあ、金のことばかり書いている人というイメージを払拭するには別のこと書くしかないわけで、今日は自分自身の恥部について語りたい。別に隠してもいなかったけどね。題して「ゲロまみれの人生」。

　昨晩あまり眠っていない。2歳の娘が午前3時にゴホゴホせき込んで嘔吐して、その後2時間元気に暴れまわっていたから。この2歳児が本当によく嘔吐する。バスで嘔吐。電車で嘔吐。耳鼻科で鼻水を吸引されて嘔吐。薬を飲まされて嘔吐。

　ちなみに私も幼いころからよく吐く子どもで、長時間移動を伴う家族旅行は苦痛でしかなかった。小学生になったら学校のトイレのにおいに嘔吐。もらいゲロは当たり前。遠足のバスの窓から嘔吐。高校の通学でも朝から爽やかに駅のホームで嘔吐。さらに片頭痛で嘔吐。飲み潰れて嘔吐。

　あれは大学1年の夏ごろだったか。サークルの野蛮な飲み会で終電を逃し、したたかに酔った私は同じ方角の先輩と一緒にタクシーで帰ることになった。しかしアルコールと車のダブルパンチ、何も起きないわけがなく……。

　れろれろれろっ

　勢いよく私の口から飛び出した吐瀉物が、重力に従ってタクシーの純白の座席を極彩色に染めようとしたその刹那。

　それを受け止めたのは先輩の両手だった。

　私が初めて人を尊敬した瞬間である。

　そんな私も今では人の親となり、2歳の娘の吐瀉物も怯むことなく受け止めている。さすがに飲んで嘔吐することは減ったが、片頭痛で嘔吐することはままあるし、船釣りに行けばたいてい海にゲロを垂れ流している。ゲロまみれの人生は続くが、ようやく他者(娘とはいえ)のゲロを受け止められるようになったことは、同じゲロまみれでも違った意味があるのだろう。

　けれども22年前の先輩にはまだ追いついていない。

　高校時代にはもう、自分は特別な存在じゃないことに気づいていた。ノットスペシャル。だからうまくできないことはやらない。失敗から逃げ続けてきた。本当は特別じゃないからこそ汗をかいてなんぼ、泥臭くもがかなきゃいけないのに。

　そこに気づかせてくれたのは先輩の両手だった。ゲロにまみれていてもその造形は神々しく、陳腐な言葉で表現すると、感動した。あれはちょっと無理だけど、泥にくらいまみれてもいいんじゃないか。そう思った。

　特別じゃなくてもいい。スマートにやる必要もない。泥にまみれて得るものがある。

　社会に出て、人がみな我より偉く見えて悩める若者へ。

　ゲロにまみれよとはいわん。花も買わなくてよろしい。

　泥にまみれているか？　かっこつけていないか？

　洗練は後からされるものである。