ビジョンを支える技術とは? 〜VisionTech領域の創出を目指して

私のビジョンには、「VisonTech( ビジョン×テクノロジー )領域の創出、研究、実用化」と書かれていますが、この記事ではその部分について掘り下げて記します。

VisionTechとは、FinTech(金融×テクノロジー)や EduTech(教育×テクノロジー)など、近年一種のバズワードと化している様々な業界の「なんちゃらTech」を、Pandoで取り扱う「ビジョン」に当てはめて私がつくった造語です。

自身のビジョンとして、「VisionTechの創出」を掲げている理由は、

1. それが、Pandoの普及(Pandoの目指す世界観の実現)に必要と考えるから
2. 私がそれに取り組むべき人間であるから

の2点です。後者は単純に、私がエンジニアであり、かつ、「目標を持ち、後悔や妥協の無い(なるべく少ない)人生を送ることの重要さ」を理解しているからです。

この記事では、主に前者の「何故、VisionTechが必要なのか?」および「それは具体的にどんなTech(テクノロジー)なのか?」を中心に記したいと思います。

何故、VisionTechが必要なのか?

以前に記事「QuoraとPando」でも触れたように、Pandoは、日常の仕事効率化やライフハックのような、誰もが常に求めている、「ちょっとした便利や快適」を提供するようなサービスではありません。

Pandoのサービスのスコープは、「何故ビジョンを持つ事が大切なのか?」という、言わば「課題を認知してもらう段階」から始まっています。

言い方を変えると、Pandoは、「既に顕在化しているニーズ(課題)に対して、より最適なソリューションを提供する」といった類のもの(世の中のほとんどのサービスはこれに当たると思います)ではなく、「まだ顕在化していない潜在的なニーズ(課題)を掘り起こした上で、そこに対するソリューションを提供する」といった類のものと言えます。

もちろんニーズが顕在化していない分、普及に際してのハードルはぐっと高くなりますが、その分、事が進んだ際のインパクトは大きく、人々の考え方や行動様式を変えることになるので、まさに「社会の変革」を狙うサービスとも言えます。

そして、過去に起きた社会の変革の背景を考えてみると、そこには「価値観の変化」と「テクノロジーの進化」の2つが両方存在していることが多いと考えています。

分かりやすい例として、環境保全の問題を考えてみます。

例えば、現在より100年前の地点に戻って、「環境保全って大切ですよね?」と言っても、多くの人には何が問題なのか分からない(課題が顕在化していない)状態かと思います。

そこから時を進めて現在より30年前くらいの地点に戻ると、地球温暖化の問題などは認知されていて、多くの人は「確かに環境は守ったほうがいいよね」とは言葉ではいいますが、実際にその人々の行動が変化するかと言えば、ほとんど期待できないでしょう。
(※ここで100年や30年と書いているのは、あくまでイメージとして伝えるための目安であり、実際の環境保全に対する
人々の意識や行動の変遷は不明です)

30年前から現在に至るまでずっと、環境保全のために、「エアコンを止めてください」、「車に乗るのをやめてください」などと言ったところで、誰も「はい分かりました」とはならないでしょう。人間のテクノロジーによる文明の進化(生活の向上)の流れは不可逆であり、テクノロジーによって生じた課題(この場合は産業革命等のテクノロジー発展で生じた「環境破壊」という課題)は、更なるテクノロジーの発展で解決するしか道はないのです。

つまり、100年前に比べて30年前は、環境保全に対する「価値観の変化」は生じているものの、もう一つの必要要素である「テクノロジーの進化」が不足しており、大きな社会変革には繋がっていない状態です。

そして、この30年間で、人類はテクノロジーを進化させ、ソーラーパネル、省エネ家電、EV(電気自動車)、IoTなどによるスマートシティ、デジタル化によるペーパレス社会の推進、等々の、環境保全に対するソリューションを生み出してきました。


つまり、環境保全という課題を切実に捉える「価値観の変化」を起点として、エネルギー、環境、サステナビリティなどを総称したテクノロジー領域「GreenTech」が創出され、更に、そこに政治的な枠組みや資本主義的なインセブティブも伴うことで、各国や各企業が知恵を絞り、人類は環境保全に対して、大きな前進を遂げてきました。

そして環境保全の問題は現在進行中の課題であり、今後も多くのGreenTechが生まれるでしょう。

下図はGartner Hype CycleのGreenTech2014版(最近のものは見つけられなかった)になりますが、これを見ても、環境保全の領域で、どんどん新しいテクノロジーが生まれていることが分かります。

Gartner Hype Cycle - Green Technology 2014
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2015-10-30-gartner-says-more-organizations-are-integrating-green-it-initiatives-into-their-core-business-operations



ガートナー・ハイプ・サイクルとは?

ハイプ・サイクル(Hype Cycle)は、ガートナー社(Gartner)がリサーチ、発表する特定の技術の成熟度、採用度、社会への適用度を示す図です。

テクノロジの成熟度と採用状況、実際のビジネスにおける課題を解消する潜在的な能力、そしてテクノロジが生み出す新たな機会などを示しています。

下図のハイプ・サイクルは、2019年の日本マーケット領域のものです。

Gartner Hype Cycle - 日本マーケット 2019
出典:https://japan.zdnet.com/article/35144733/

皆さんも「5G」、「エッジコンピューティング」、「ブロックチェーン」などはご存知かと思います。

もう少し補足すると、ハイプ・サイクルは、この「5G」や「ブロックチェーン」の各領域に対して、詳細なハイプサイクルを提供しており(むしろ、こっちがメイン)、例えば、「ブロックチェーン」のハイプ・サイクルは下図のようになっています。

Gartner Hype Cycle - Blockchain 2019
https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2019-10-08-gartner-2019-hype-cycle-shows-most-blockchain-technologies-are-still-five-to-10-years-away-from-transformational-impact#:~:text=The%20Gartner%20Inc.,blockchain%20continue%20to%20roll%20out.



そして、Pandoが取り組もうとしている課題も、上記の環境保全の問題と重ねることで、捉えやすくなる部分が多いと考えます。

「ビジョンを持つ事の大切さ」への人々の認知が、環境保全でいう30~100年前のどの辺りに位置するかは分かりませんが、個人的にはかなり30年前に近い所まで進んでいると思っています(「ビジョン」という単語は意識していないにしても、画一的な人生ではなく、本当に自分のやりたいことを、やるべきことに向き合う人が増えている)。

つまり、「個々がビジョンを持つことが大切だよね」という「価値観の変化」の下地や気運といったものは高まりつつあり(ここの価値観の変化自体もPandoを通して促進していくべき部分です)、それらを社会的な変革に結びつけるには、ビジョンの構築や実現を促進するテクノロジー(=VisionTech)が必要となります。

「環境に悪いからエアコンを消しなさい」と言われても簡単には消せないように、「人生において本当に重要なことをビジョンとして全力でフォーカスしなさい」と言われても簡単に目の前の幸せ(重要では無いが満足感の高いもの)をバッサリ捨てられる人は少数派であり、ここのギャップを埋めるにはテクノロジーの進化が必要不可欠です。

数年後、Gartnerが発表するハイプ・サイクルの一つとして、FinTechやGreenTechと並んで、「VisionTech Hype Cycle」という新たなハイプ・サイクルが新たに加えられているのかどうか?

これは、Pandoの目指すものが、テクノロジーを伴って、社会に変革を与え得る状態となれているのかどうかを判断する一つの分かりやすい目安と言えそうです。


VisionTechって具体的にどんなものか?

現時点で私の考えるVisionTechとなり得るもの(=Pandoのサービス価値を高め得るもの)を列記します。それぞれの詳細については、また別の記事で紹介できればと思います。

このリストは不正確、不完全であり、研究や実践を通して適宜アップデートしていく必要があります。また、各項目(各テクノロジー)は単体で成立するものではなく、相互に依存、補完し合うものです。


<データを叡智にかえる技術>

個人であれ組織であれ、何か目標を立てて、そこに挑む時、全くのゼロから試行錯誤することは稀であり、ほとんどの場合は、先人の知恵を拝借し、アレンジする形となると思います。

後述する「コーチングに関する技術」にも通ずる話になりますが、常に知恵を貸してくれる人がいる環境は稀であり、ネット上の情報(データ )に頼らざるを得ない訳ですが、下図のように、それらのデータ単体では意味を成さず「データ=>情報=>知識=>インサイト(洞察)=>知恵(叡智)」と、データの塊を知恵に変える必要があります。

データ から叡智を引き出すことで初めてインパクトを与えることができる
https://twitter.com/mkurleto/status/1159147195658113024

情報を集めることや検索、表示する技術は既に多くのサービスで実現されていますが、この情報を叡智に変える技術については確立されていません(Googleが取り組んでいる情報の整理は、目指す部分はおそらくほとんど同じだが実現はしていない)。

ビジョンの設定や実現に向けた取り組みにおいても、この情報から知恵を引き出す技術というのは重要であるので、VisionTechの中核を成し得る技術と言えそうです。


<非構造化データを取り扱う技術>

非構造化データとは、その名の通り構造化されていない(データフォーマットが決まっていない)データ のことで、画像、動画、音声などのデータ がこれにあたります。

構造化されたデータのように、CSVやリレーショナルデータベースで取り扱うことができず、データどおしの関連などを計算することが出来ないため、宝(データ)の持ち腐れとなってしまいます。

アメリカのPalantir(パランティア)という企業がありますが、ここはザックリ言うとデータ分析企業なのですが、CIAやFBI、アメリカ軍、国防総省などを顧客に抱えており、テロ事件の捜査などに対するソリューションを提供しています(ウサマビンラディンの潜伏先の発見にも同社のソリューションが用いられたとされています)。


Palantirのデータ 分析のイメージ図
https://medium.com/@timbandito/silicon-valleys-most-secretive-and-controversial-company-may-go-public-this-year-c7ca5e9381e1

Palantirのソフトウェアの詳細についてはもちろん公開されていないのですが、「ダイナミック・オントロジー」という情報の定義を柔軟に変えられる技術がコアになっているようです。

この技術により、例えばテロ組織を見つける際には、ターゲットとするエリアや人々の、電話記録、データ通信情報、SNS情報、GPS写真、などなど、まさにバラバラな非構造化データを解析し、それらをうまく関連づけることで、意味のある情報(結論)を導きだしています。

Pandoのようにビジョンを取り扱うサービスにおいても、家計簿アプリ等とは違い、インプットされるデータ のフォーマットはバラバラであると想定されるため、それらの非構造化データ の中から関連性を見つけ出し、意味のある情報を導きだすという技術は、VisionTechの中で中核となると思われます。


<脳(思考)の状態をハックする技術>

脳に対して「ハック」というと抵抗を感じる人が多そうではありますが、体重計や血圧計など、外部から人体を診断できる仕組みによって、多くの人が健康面で恩恵を受けているように、脳(思考)を外部から診断(ハック)できる仕組みは、多いに人間の可能性を広めてくれるはずです。(もちろん、これらの技術に付随する様々な懸念や問題については慎重に検討、解決しなければなりません)

特に、ビジョンの設定や達成においては、中長期の継続的な努力を伴う事が多いと想定され、このようなケースでは、自分が日々どの程度、意識をビジョン達成に割けているのか?何が障害になっているのか?など、思考の状態を把握できれば面白いソリューションになり得ると思います。

Facebookなどが研究を進めているブレインコンピューティング。意外にその実現はすぐそこに来ているかもしれない。
https://techcrunch.com/2017/04/19/i-sure-hope-so/


<コーチングに関する技術>

ビジョンの実現に近くために、独力だけでは限界があり、適切なコーチングが必要となる場合があります。

プロの世界で一流と呼ばれる多くの人々が、幼少期より一流の指導者や指導環境のもとに身を置いているように、大きな目標(ビジョン)を達成するに当たって、コーチングの影響は大きいです。

どの世界にも指導を仰ぐべき一流の指導者はいますが、問題は、そのコーチングにかかるコストが高く、1対1の丁寧な指導を希望者全員に行うことはほとんどのケースで非現実的になるでしょう。

そこで、テクノロジーを用いてこのコーチングのコストを下げることで、ビジョンの実現を助けることができそうです。

例えば、国内EduTech企業の大本命であるatma plusは、これまでの学習指導を、「コーチング(学習指導)」と「ティーチング(教材習得)」に分け、人間と人工知能で教育を分担するというソリューションによって、大きな成果を生み出しています。

150教室が導入待ち「AI教育」の衝撃--15億円調達のatama plus(アタマプラス)創業2年で急成長

atama plusが提供するオーダーメイドAI学習。AIの方が強い部分はAIに任せつつ、人と機械の両輪で効率のよいコーチングを実現。
https://startup-unicorn.com/atama-plus/

この辺りの仕組みは、ビジョン達成のためのツールとしても応用できる部分が多そうです。



こうして並べてみると、最後のコーチングを除いて、その他はすべて「曖昧なものをうまく取り扱うための技術」という点で共通していますね。この辺りは、既存のサービス(ソリューション)ではうまくクリアできていない部分でもあり、VisionTechにおいては主要な技術要素となりそうです。


以上、私のビジョンである「VisionTech領域の創出」について、その必要性や、目ぼしい技術要素について記しました。こういう技術もVisionTechとして有力なのでは?というものがあれば是非コメントください。

今後のPandoおよびVisionTechの発展に期待ください。


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